カテゴリ:木造住宅のこと( 30 )

 

ヘリテージマネージャーって何?

3月1日の毎日新聞に「ヘリテージマネージャーって何?」という記事が掲載されました。有名な文化財はしっかり保護されていますが、名もなき歴史的建造物はその価値とは関係なく解体されてしまうことがよくあります。それらの保護を担うのがヘリテージマネージャーの役割です。滋賀県でも建築士会が育成講座を始めて、これまで92名のヘリマネが誕生しています。耐震診断や補強計画をする際、構造的な視点だけで行うと建物の価値を下げてしまいかねませんし、そのような残念な補強は文化財でもよく見られます。建物にとってどうするのかを総合的に判断できるプロフェッショナルとしての資格として、ヘリマネが認知されると良いなあと思います。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2018-03-06 11:33 | 木造住宅のこと  

熊本地震の調査報告

 この度の熊本地震で被害に会われた方にまずは心よりお見舞い申し上げます。去る5月3日から5日にかけて職人がつくる木の家ネットで組織された熊本地震の調査に参加しました。主として伝統構法建物の被害状況を調査するためです。
 建物被害には大きくふたつに分類できそうです。ひとつは地盤の崩壊によるもの、そしてもうひとつは建物自体がもつ耐力不足等の問題によるものです。
 地盤の崩壊はさらに大きくふたつに分類できます。ひとつは造成地の崩壊や地割れによる基礎の崩壊、そしてもうひとつは地盤の液状化による建物の沈下や傾斜です。前者は建築時に対処することは極めて困難ですが、後者は地盤調査が一般的ではなかった頃の建物に顕著な被害が出ているようであり、地盤改良を施すなど(既築の建物には困難ですが)建築時に対処が可能です。

写真1 地盤の崩壊1
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写真2 地盤の崩壊2
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 山間部の石積み擁壁が崩壊している光景はあたかも昔ながらの山間部の集落が地震に弱いといった印象を与えますが、ヒアリングをしてみるとそうではないことがわかりました。今回調査した大切畑地区などは100年程度前から人々が暮らし始めたとのことであり、地震の発生周期からすれば、安全を確認していなかったと言わざるを得ません。つまり伝統的な集落は数百年の歴史を経て安全性を確認しているからこそそこに住み続けていると考えられます。そういう意味では100年程度しか人が暮らしていない地域というのは言うなれば新興住宅地です。さらに悪いことに、現代のような造成技術が発達していなかったことから簡素な石積みで無理な造成をしており、このことが被害を拡大させたと考えられます。

写真3 地盤の崩壊による建物被害1
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写真4 地盤の崩壊による建物被害2
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写真5 地盤の崩壊による建物被害3
(事情により非表示にしています)

 建物自体の耐力不足については、現行の建築基準法を守れているかどうかではっきりと運命が分かれると言わざるを得ません。現行の基準(2000年)を守っているであろう建物で耐力不足が原因と考えられる倒壊はみられません。逆に言えば、それ以前の建物はプレファブ造でも大きな被害が出ているものもあり、構法による差異はあまりみられません。仕様規定であれ限界耐力計算であれ、きちんと法律を守って建てることが最も重要ですし、それ以前の建物は耐震補強を施すことが重要です。新しい建物で唯一、小屋部分が倒壊しているものが複数みられました。熊本では野路板に構造用合板を使用しないことが多いとのことであり、面剛性が不足していることが原因であると考えられます。

写真6 筋かい金物や柱脚金物が無い建物
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写真7 プレファブ造の被害
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写真8 小屋部分の被害
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 伝統構法による建物の被害は概して大きくみえます。構造的には十分に地震に耐えていても土壁が落ちたりすると大破しているようにみえます。伝統構法建物はその変形性能を活かして地震に耐えるため、どうしても変形の痕跡が残ってしまいます。しかし、大した手間をかけなくても修復することができるのです。また、今回の調査で最も不思議だったのが、偏心についてです。一般に偏心していることは良くないことであり、偏心が大きいほど被害は大きくなるといわれています。しかし、大きな変形を許容する伝統構法では、偏心による影響は全く感じられませんでした。水平構面が地震エネルギーを吸収しているとしか考えられません。屋根瓦については、棟が落下すると大被害に見えてしまいます。瓦葺きの工法は阪神淡路大震災の反省からガイドライン工法が普及しており、大被害のものと、(ガイドライン工法で施工されていると思われる)全くの無被害のものに二分されます。

写真9 伝統構法建物の被害
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写真10 偏心の大きな伝統構法建物
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写真11 ガイドライン工法による瓦屋根
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 伝統構法による建物で最もしてはいけないことは、我流による良いとこ取りではないでしょうか。例えば石場建てで基礎に緊結しないのであれば、一切留めつけてはならないし、仕様規定の逆手をとるようなこと(壁があるのに壁倍率にカウントしないなど)をすれば引抜が発生したり、偏心が増すなど、予想外の挙動をすることになり、最悪の場合、人の命を奪うことになります。
 建物、特に住宅は人命を守ることが最大の役目であることを改めて肝に銘じた熊本地震調査でした。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2016-05-08 18:17 | 木造住宅のこと  

記憶を継ぐ家の引渡し

2009年の1月にリフォームをご相談を受けてから4年。ようやく記憶を継ぐ家の引渡しができました。(まだ未完成の部分もあるのですが。。。)
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以前の建物もただ解体するのではなく、引き倒し実験に使用させていただき、伝統構法の貴重なデータとなりました。
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個人の住宅ですので、あまり写真が載せられませんが、記憶を継ぐ家のコンセプト「以前の家がそこに存在したことを思い起こさせるような家」が実現できたと思います。水中乾燥材を使い、石の上に大工の手刻みによる木組みで丁寧につくりました。壁は地面から生えてきたような納まりです。
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以前もそこにあった縁側には、山元さん作の障子で全開放できます。午後の暖かい日差しが入っていて、すでに息子さんがこの特等席を独り占めしていました。
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家の中心はメースンリーヒーターです。オーブンもついています。宮内さんが真剣な顔をしているのは、お金の話をしてるから???
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実はこのストーブにはもう一つ秘密があります。後側がこんな形をしています。決して階段ではありません、へんな形をしたストーブなだけです。自己責任での上り下りに私は関知しません。建築主さんには好評でした。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2013-04-09 12:01 | 木造住宅のこと  

理事長現る in Eディフェンス

ご無沙汰しています。書くことがなかったわけではないのですが、Facebookなんかでちょこちょこと近況を書いているとブログが面倒になって・・・。
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久しぶりに理事長が現れました。場所は兵庫県三木市のEディフェンスです。9月18日と19日に「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会(長すぎる)」の実大振動台実験がおこなわれました。理事長は材料部会で水中乾燥の謎を解明中の研究者として、副理事長の宮内さんと私は損傷観察などの働くおじさんとして実験に参加しました。今回の実験の最も大きな特徴は、試験体が実際に建てられている伝統的構法の建物に近いことです。具体的には、
 1.部分2階(総2階でない)
 2.偏心している(南側は開口だらけ)
そして何といっても
 3.石場建て
これだけでも胸が高鳴ります。しかしこれに加えて、2棟のうちの片方には柱脚に地長押を設けて、柱脚を固定した場合の挙動や土台式の石場建てを模擬したりと、実験内容も盛りだくさんです。
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実験の様子はこちらに公開されていますし、詳細な数値もじきに報告されるはずですので、感想を少しだけ・・・
18日の加振はどちらの建物も震動台に固定していませんでした。するとどちらも同じような損傷をするのですが、当然ですが地長押で繋がれている柱脚は傷みがありません。19日の1回目の加振では地長押を振動台に固定したのですが、滑らない分、上部の応答が大きくなりました。前日の加振で傷んだ壁を2Pだけ荒壁パネルに取り替えてあったのですが、その損傷の差が顕著でした。そして最終加振は地長押を固定しないで800ガルを越える巨大地震波が入力されました。おおかたの予想に反して両方の試験体とも損傷はあまり増えておらず、石場建ての免震効果が証明されました。もし、地長押を固定したまま加振していたらきっと倒壊していたと思います。
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最後にひとつだけ秘密の情報を。地長押が一般的ではないと言われる方が多かったのですが、試験体は地長押を推奨したり、仕様規定にしようとしているわけではありません。階高を変えずに柱脚を拘束するためのアイデアです。何れにしても、柱脚がバラバラにならないディテールを考えないと、隅柱に写真のような損傷が発生します。この柱が折れたからと言って建物が倒壊するわけではありませんが・・・。

伝統木造に接して以来、多くの実務者が語ってきた石場建てに関する素人的で叙情的な話(つまり石場建ては免震効果があること)が、条件さえ揃えば大筋正しいことが証明される結果でした。標準設計法もかなり簡易な手法で既に概要ができていますので、少ない手間で開放的な石場建ての確認が降りる日もそう遠くないと思います。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2012-09-20 17:22 | 木造住宅のこと  

構造見学会にお越しいただき、ありがとうございました。

「記憶を継ぐ家」構造見学会にお越しいただき、ありがとうございました。
木造住宅に興味をお持ちの方から、大工、設計者、大学の先生などのプロフェッショナル、これから建築を志そうと勉強中の学生さんまで、延べ160名以上の方に見ていただきました。今回最も遠方だったのは北海道、他に東京、横浜、静岡、愛知、新潟、山梨、福井、京都、大阪、奈良、和歌山、兵庫、広島、岡山、徳島、高知・・・、全国からお越しいただきました。大工のこだわりが随所にちりばめられておりましたが、いくつ気が付いていただけたでしょうか。ご感想をお聞かせいただければ幸いです。
最後になりましたが、見学会の開催をご快諾いただきました建築主様には、心よりお礼申し上げます。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2012-03-05 12:29 | 木造住宅のこと  

セミナーを開催します。

この度、甲賀森と水の会でセミナーを行うことになりました。
タイトルは、「開口部を有する壁の耐震性能実験 -耐震要素としての可能性の検証-」です。開口部のある壁の壁倍率を求めて、軸組構法の可能性を探るという主旨です。両日とも実験の様子を見学して頂く予定です。できるだけたくさんの方に見て頂きたいと思いますので、参加者を募っています。

1.セミナー日程及び場所
 1)日程:平成23年11月19日(土)、20日(日)、9:00~16:00
 2)場所:滋賀県近江八幡市古川町1414、滋賀職業能力開発短期大学校、Tel.0748-31-2254
      実習棟1F 施工実習室
2.セミナー概要
 1)背景:
近年の木造住宅における要望や指向は、耐震性を重視したものが主流であり、構造的に堅固なものが多くみられる。一方、施主の要望は幅広く、外観や部屋から見える景色、光、風等、デザインや機能性を重視した要望も少なくない。(連続窓の設置や自由な開口部への要求)
しかし、これら開口部を有する壁については耐震要素として認められておらず、構造(壁の長さや位置など)を検討する際、制約されるのが一般的である。また系統的に実験し、且つ検証された報告はあまり見られない。
 2)目的:
開口部を有する壁について、耐震要素としての可能性を検証する。
(実験から壁倍率の算定までを実施)
 3)実験概要:
  ①試験体概要
 たすき掛けの筋かいを有する壁を基本とする。壁長さ910㎜と1820㎜の2タイプの壁について行う。また、開口部については、フレームのみのものから2/3が開口部のものまで、計5形状とし、合計10種類の壁について行う。
  ②実験装置
 滋賀職業能力開発短期大学校にて設置されている、面内せん断加力試験装置(最大荷重100kN、ストローク500㎜(最大)、マルイ社製)を使用する。右写真1参照。
  ③実験方法及び評価方法
「木造軸組工法住宅の許容応力度設計第6章6.4.4、6.4.5」に準じて行う。実験については、柱脚固定式、加力方法は正負交番加力とする。
  ④その他
 実験について、フレームの損傷が無いものについては、耐震要素(筋かい)のみを取り替えて実験を実施する。
3.その他
 H23年耐力壁ジャパンカップへ参加した時の映像を放映する予定です。
 内容:予選、決勝トーナメント、解体作業の映像と写真など。

申し込みは、下記まで
氏名、所属、参加可能日時をメールかFAXでお知らせください。

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甲賀・森と水の会 事務局 /川端
〒520-2342 滋賀県野洲市野洲 148-6
           (川端建築計画内)
TEL: 077-575-1929 FAX: 077-575-1929
E-MAIL ADRESS: moritomizu@gaia.eonet.ne.jp
URL: http://www.eonet.ne.jp/~moritomizu/
blog:http://moritomizu.exblog.jp/
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by moritomizunokai | 2011-10-29 18:01 | 木造住宅のこと  

壁土作り

急に暑い日が続いています。この炎天下に壁土を捏ねているのは宮内さんです。棟梁自らやるところがすごいところ。女性大工も足を取られながら頑張っています。私は10分見ていただけでギブアップです。壁土の量は半端ではありません。ここに建つ家は壁土を約40立方メートル使います。本格的な木組みと石端建ての家は来年の3月に完成予定です。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2011-06-24 19:10 | 木造住宅のこと  

実験はすごいが設計法は?

兵庫県三木市のE-ディフェンスで行われている実大実験も明日からいよいよ3週目です。まだまだ解明されていないことが多いといわれる伝統的構法ですが、実験自体は精度良く行われているようです。例えば1階の応答値が15分の1ラジアンのときの性能が知りたい場合、土壁パネルの配置でほぼ予想通りの変形になるよう計画されています。伝統的構法の解析技術がここまで来たのかと思う反面、設計法にどう反映されるのかという不安が募ります。今も限界耐力計算で建築確認申請を出すと、小壁の高さに対する補正など、細かな訂正をさせられます。いくら伝統的構法が構造と意匠が一体だといっても、ほんとうに些細な変更さえ許容できないことになりかねません。ましてやリフォームや増築となればなにをかいわんやです。在来工法の筋かいであれば例えば2Pの片筋かいは1Pの片筋かいの2倍で、階高による補正もありません。いい加減といえばいい加減ですが、柱だけでも100本もある木造ではそれくらいいい加減でないと根気が続かないという実務者の事情もわかっていただきたいのです。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2011-01-18 12:03 | 木造住宅のこと  

理事長現る’11

新年あけましておめでとうございます。

今年はいきなり振動台実験から始まりました。「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会による実大実験です。たくさんの人の協力でこうした実験がなりたっています。
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甲賀森と水の会からは宮内さん、私を含めて3名が参加しています。そうです、理事長もクビを覚悟(?)で休暇をとっての参戦です。来週、再来週と実験は続きます。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2011-01-08 16:59 | 木造住宅のこと  

完成見学会にお越しいただき、ありがとうございました。

たくさんの(プロの)方に見ていただきました。床の漆や器具付けなど、中途半端な状態になってしまい、竣工写真も未だ撮影できていません。昨日はじめて夜景を見ました。チープな照明器具ばかりですが、そこそこ見れます。
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例によって木製建具は山元建具店さんです。仕事はバッチリ、というより毎回グレードアップしていってます。おうまカレンダーがすでに飾られていました。(川端建築計画 川端眞)
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by moritomizunokai | 2010-12-24 14:46 | 木造住宅のこと