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理事長現る in Eディフェンス

ご無沙汰しています。書くことがなかったわけではないのですが、Facebookなんかでちょこちょこと近況を書いているとブログが面倒になって・・・。
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久しぶりに理事長が現れました。場所は兵庫県三木市のEディフェンスです。9月18日と19日に「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会(長すぎる)」の実大振動台実験がおこなわれました。理事長は材料部会で水中乾燥の謎を解明中の研究者として、副理事長の宮内さんと私は損傷観察などの働くおじさんとして実験に参加しました。今回の実験の最も大きな特徴は、試験体が実際に建てられている伝統的構法の建物に近いことです。具体的には、
 1.部分2階(総2階でない)
 2.偏心している(南側は開口だらけ)
そして何といっても
 3.石場建て
これだけでも胸が高鳴ります。しかしこれに加えて、2棟のうちの片方には柱脚に地長押を設けて、柱脚を固定した場合の挙動や土台式の石場建てを模擬したりと、実験内容も盛りだくさんです。
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実験の様子はこちらに公開されていますし、詳細な数値もじきに報告されるはずですので、感想を少しだけ・・・
18日の加振はどちらの建物も震動台に固定していませんでした。するとどちらも同じような損傷をするのですが、当然ですが地長押で繋がれている柱脚は傷みがありません。19日の1回目の加振では地長押を振動台に固定したのですが、滑らない分、上部の応答が大きくなりました。前日の加振で傷んだ壁を2Pだけ荒壁パネルに取り替えてあったのですが、その損傷の差が顕著でした。そして最終加振は地長押を固定しないで800ガルを越える巨大地震波が入力されました。おおかたの予想に反して両方の試験体とも損傷はあまり増えておらず、石場建ての免震効果が証明されました。もし、地長押を固定したまま加振していたらきっと倒壊していたと思います。
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最後にひとつだけ秘密の情報を。地長押が一般的ではないと言われる方が多かったのですが、試験体は地長押を推奨したり、仕様規定にしようとしているわけではありません。階高を変えずに柱脚を拘束するためのアイデアです。何れにしても、柱脚がバラバラにならないディテールを考えないと、隅柱に写真のような損傷が発生します。この柱が折れたからと言って建物が倒壊するわけではありませんが・・・。

伝統木造に接して以来、多くの実務者が語ってきた石場建てに関する素人的で叙情的な話(つまり石場建ては免震効果があること)が、条件さえ揃えば大筋正しいことが証明される結果でした。標準設計法もかなり簡易な手法で既に概要ができていますので、少ない手間で開放的な石場建ての確認が降りる日もそう遠くないと思います。(川端建築計画 川端眞)

by moritomizunokai | 2012-09-20 17:22 | 木造住宅のこと  

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